「絵画を考える」作家紹介◆|翅失・野津晋也・和田みつひと

9月20日(日)まで開催の「絵画を考える  ー水を描くー」は、まもなく折り返しとなります。

 

先週から、作品紹介と作家によるコメントを紹介していますが、今回は、中村索・野津晋也・和田みつひとの3人を紹介いたします。 (50音順)


本展は、合計7名の作家さんに参加いただいています。前回の紹介はこちらからご覧ください。

 

中村索

 

「水の中の雲」(2020)
キャンバスにアクリル絵の具
117×80×2.5cm

「アムステルダム 1〜4」(2020)
キャンバスにアクリル絵の具
(1)22×7.5×2cm  (2) 33.5×24.5×2cm  (3)(4) 53×33×2cm 

●作品コメント

「水の中の雲」
北極圏の分厚い氷の下の海中に暮らす生き物たちは、当然のように口数が少なくなる傾向があります。大昔から、現在に至るまで、ずっとです。

「アムステルダム 1〜4」
一番好きな街はと問われたら、(トレドは別格として)圧倒的にアムステルダムだな、と思いました。30年前です。それ以来一度も訪れていません。もうパスポートさえ、どこかへいってしまいました。


●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 多様な視覚的イメージを強く喚起する、可能性に富んだテーマだと思いました。

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 実際の水を観察することはせずに、自分の中のイメージをもとにして制作を進めました。念頭にあったのは、雲、氷、湖、深海、運河、などです。

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 同じ一つの根っこから、別々の方向に枝分かれして育ったように、トーンの違う2種類の絵になりました。氷と、水蒸気ほどには違わないと思います。

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 例えば、歌や、詩やダンスのような、とてもべーシックな表現形式のひとつだと思います。

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 コロナも心配ですが、加齢のため、腰、膝、肘など関節周りがすぐに不調になります。なるべく長く、大事に使っていきたいです。絵を描くことは、ダンスの一種だと思っているので。

[略歴]
1970  神奈川県出身
1993  東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業

個展
2017  仏蘭西厨房「かえりやま」(企画:工房 親)
1999  工房 親  (東京) (2000,2001,2006)

グループ展
2019  「絵画を考える - 音を描く - 」
2018  「絵画を考える - 時を描く - 」
2017  「絵画を考える - KO・DA・WA・RI - 」
2016  「絵画を考える - 作家のフィールド - 」
2015  「絵画を考える - 自然 - 」
2010  「絵画を考える - 10人の視覚提言 - 」

 

野津晋也

 

 

「連想・景1.」「連想・景2. 」(2020)

紙、インク、ガッシュ、水彩、パステル、鉛筆

59.546.5cm

 

「別の謎」(2020)

紙、インク、ガッシュ、水彩、パステル、鉛筆

25.7 x18.9cm

 

●作品コメント

「連想・景1. 」「連想・景2. 」

 窓ガラスにびっしりとはりついた水滴。しばらくすると、その重さに耐えきれず次から次へと下方へ流れだす。水滴のなくなったところから垣間見られる向こうの眺め。その景色と手前の景色との対話、或いは不意の一撃。

 

「別の謎」

こちらとあちらの境界に横たわる水域。流れおちる先は彼方の幻想か?

 

●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

 水辺のそばで育ったせいか、これまでの作品にもたびたび「水」にまつわる要素が現れてきました。「水を描く」ということと私のあいだには、因縁めいた親和性があるように思います。

 

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

 「水」についての私の印象は、流れる、溢れる、不定形な、そして濁流のように不透明で渦巻くものなどです。どちらかと言うと、水の負の側面に特化しています。

このような水に関する私的な要素と複数の風景や像を画面の中に併置することで、そこに新たな知的解釈が促されるのではないかと考えております。

 

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

 さまざまな描画材料による「黒」の色味や質感の違いに興味をもっております。画面の中でそれぞれの「黒」が引き起こすある役割。それが「水」を暗示するのかどうか、その行方を探しております。

 

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

 恐らく、私の中には一つの「欠落」があります。長方形のチーズ片を少しだけ齧ってできたようなわずかな欠落です。自己免疫によるものかどうかはわかりませんが、その欠落をどうにかして元のかたちへ取り戻そうとしています。日々、その欠落したところへさまざま事柄が引っかかってくるのですが、欠落部の形状はいびつで、なかなかピッタリとは整合しません。だからこそ、それを取り除き、新たにその鋳型に合致する事柄を探しだすはめになるのです。しかも困ったことに、その引っかかった事柄は"ある種の偏り"が無視できないときています。

 ただここで考慮すべきは、取り除き、次第に内部へ堆積してくる"ある種の偏り"をどう処置するのか、ということです。堆積し偏った事柄の渦に飲み込まれそうになりながらも、ある日藁をも掴む想いで、目の前の紙へ筆をおろし、それを可視化してみようと思いいたったのです。

 私が排除しようとした"ある種の偏り"。実は、それこそがすべての「発端」だったのかもしれません。

 

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

 11月下旬に個展を予定しております。ひとまず現状はそこへ向け、引き続きの制作となります。コロナ禍への"魔除け"としての礎となりますように。

 

[略歴]

1969 島根県松江市生まれ

1992 鳥取大学農学部農林総合科学科卒業

2000 東京藝術大学美術学部絵画科油画専攻卒業

2002 東京藝術大学大学院美術研究科油画専攻修了

2019 個展「指の銀行」 アートギャラリー環  (東京)

   「絵画を考える  ―音を描く―」 工房親  (東京)

2018 個展「ふくら芽」 アートギャラリー環  (東京)

2016 「絵画を考える  ―作家のフィールド―」 工房親 (東京)

2015  "CORRESPONDENCE LANDSCAPE"  工房親 (東京)              他展示多数

 

 

和田みつひと

 

「水を想う、水が想う」(1)(2)

2020

写真

画像サイズ 39cm×58.5cm 

シート 大全紙:50.8cm×61cm

額(外寸):70.8cm×89.7cm

 

●作品コメント「水想う、水が想う」

1997年より、光と色のインスタレーション作品を制作している。制作の主題は、「見ること」と「見られること」との関係の考察だ。「見 ること」と「見られること」との「積極的な一体化」の場を創出する試みである。 そして、死に直面するという個人的な体験が、死生という主題となって近年加わり、より強く制作の動機となっている。

2018年より、「円環する時空」というコンセプトで、インスタレーション 作品を制作し、その構成要素とし

て、物質であり虚構を映し出 す「鏡」、物体であり空間を孕む「花の絵画」、虚構である「ループ映像」 などの挿入を試み、死生の隠喩として機能させている。同時に、同様のコンセプトで、写真作品の制作を始めている。「円環する時空」と は、今を生きる現在を過去から直線的に堆積した時空でなく、死生、虚実を内に抱え持ち、過去と未来をも同時に合わせ持つ円環的な時空 のことだ。インスタレーション作品と写真作品、また、それらを融合させることによって、人と世界が未分化な状態、いわば、言語と身体 を獲得する以前(生前)、もしくは言語と身体を喪失した以後(死後 の状態を表現したいと考えている。

死生という主題から生まれた「円環する時空」というコンセプトの具現化にあたり、光と色による抽象的な場を設定して、他者である鑑賞 者に「気づき」を喚起するインスタレーション作品から、光を手掛かりに作家個人の「気づき」によって抽象化を図り制作する写真作品へ と制作の重きが移行した。写真撮影では、眼前に広がる世界に反応すると同時に、自身の意識の揺れや変化に触れることになる。また、人 間の存在と意識をより深く考察し表現することが出来るようになると考えている。そして、写真によって切り取ら れた日常の断片を、死生、虚実、時間の隠喩として機能するよう、組写真もしくはスライド映像に仕立て提示する方法を選択するに至っている。

 

●「水を描く」というテーマで展覧会へのお誘いをいたしましたが、初めに何を想いましたか? 

ここ数年、スライド画像での提示や、インスタレーション作品と組み合わせて写真映像を発表しています。光の存在を手がかりに撮影する際に、水面をモチーフにすることが少なくありません。今回、展覧会にお誘いいただき、「水を描く」というテーマを手がかりに、写真作品(紙焼き作品)のみで制作し発表する良い機会になると考えました。

 

●本テーマで取り組んだ新作について、どのように取り組まれましたか?

「水を描く」というテーマに則り、水面を撮影した写真を2枚選び組み合わせました。2枚の写真を組み合わせ展示することで、「水」を想う(見る)と同時に、「水」に想われる(見られる)、各々が相互関係にあり、主客が同一にある状態を表現したいと考えました。

 

●展示作品についてお聞かせください。また、新たに試みたことや特にこだわった部分があればお聞かせください。

これまで、スライド映像作品の発表を前提として制作していました。ミラーレスカメラで撮影し、撮影したデジタル画像を液晶画面で確認し、スライド映像に仕立てる制作は、いわばデジタル作業に完結した作業です。今回の作品は、ディスプレイ表示された発光する画像から、光が反射することで見える印画紙上への移行の作業です。モノとしての写真作品(紙焼き作品)として発表するということで、より写真の諧調表現に苦心しました。

 

●あなたにとって「絵画」とは何でしょうか。

大学時代は日本画を専攻し、卒業後「絵画とは?」という問題意識から始まった制作は、光と色のインスタレーション作品へと展開しました。そして、光そのものの効果によって生み出される写真映像の利用は、「見ること」と「見られること」との関係の考察という、これまでの制作の主題と通じるものがあると考えています。今回、写真作品の制作を、主体と客体の同一性、及び抽象性と純粋な感覚性への志向による試みと考えると、そもそもの制作テーマである「絵画を問う」という問題意識と連続していると考えています。「絵画を考える」ことは、制作における根源テーマと言ってもよいでしょう。そして、まさしく絵画は、「美術」であり、「美」を問う「術」なのでしょう。

 

●コロナ禍ではございますが、今後の活動の目標や挑戦したいこと、制作の姿勢などをお聞かせください。

コロナ禍の中、誰もが人と世界との関係、その在り方を考えざるを得ない状況に直面しています。このような状況下で何が出来て、何を為せるのか、何を為したいのかを丁寧に考察と試行を繰り返し、制作を深化させたいと考えています。

インスタレーション作品と写真作品、各々の表現を深めると同時に、それらを融合させることによって、新たな作品を提示していきたいと考えています。

 

[略歴]

主な個展

2019 「何時でもない/何時でもある」gallery SIACCA (東京)

2018 「何処でもない/何処でもある 地上の空間」Gallery Hasu no hana (東京)

2017 「残像の部屋」 ギャラリー現 (東京)

2013 「残像の花」Gallery Cocon 古今 (東京)

2009 「Behind Blue Light Yokohama」BankART Studio NYK、本町実験ギャラリー、BankART かもめ荘、BankART 桜荘 (神奈川)

2007 「ピンク× グリーン」プロジェクト/上野の森美術館ギャラリー (東京)

2005 「replace it for the life」or'est( ベルリン)

2004 「green/green」慶應義塾大学日吉キャンパス来往舎ギャラリー (神奈川)

2001 「〈光のかたち〉公園灯プロジェクト」アートリンク上野‐谷中2001、上野恩賜公園 (東京)

主なグループ展

2019 『ヒカリアレト2』旧石井県令邸 (盛岡)

2010 『 あいちアートの森 知覚の扉供抓邀敖癲(愛知)

2010 『 「知覚の扉』豊田市美術館 (愛知)

2009 『 BankART 妻有 桐山の家』BankART 妻有 (新潟)

2006 『 DZUGUUUN』Galeria H.arta (ティミショアラ)

2005 『 Black Light Gallery』U3 Banhof & Tunnel,Potsdamer Platz (ベルリン)

   『 BankART Life 24 時間のホスピタリティー 〜展覧会場で泊まれるか?〜』BankART Studio NYK (神奈川)

2004 『 「カフェ・イン・水戸2004』水戸芸術館現代美術センター (茨城)

2000 『 空間体験 : [ 国立国際美術館 ] への 6 人のオマージュ』国立国際美術館 (大阪)

   『 プラスチックの時代|美術とデザイン』埼玉県立近代美術館 (埼玉)

 

 


 

絵画を考える -水を描く-
会期 2020年9月5日(土) - 9月20日(日)
開廊 水 - 日   12:00 - 19:00  (日曜は18時まで。展示最終日は17:00まで。)
休廊 月・火
 
https://www.kobochika.com/homepage/html/exhibition_20200905.html
 
※オープニングは開催いたしません。
 新型コロナ感染拡大状況に応じて開催日時や営業方法が変更となる場合もございます。
 ご来廊時にはマスク着用の上、手指消毒をお願いいたします。
 最新情報はwebsite、または、email宛てにお問い合わせ下さい


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  • 2020.09.18 Friday
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