パリでのアジェ体験

工房親(CHIKA)深川です。今回は、写真家 相模智之からのお便りPart2「パリでのアジェ体験」です。(Part1 「Steidl滞在記」)

19世末から当時のパリの様子を数多く残した写真家"ウジェーヌ・アジェ (Eugène Atget)"。100年以上経った今、アジェが残した写真を追体験した相模智之が感じたこととは?

 

*****

 

私はシュタイデル社での滞在後、パリに向かったのだが、ここではアジェについて書きたいと思う。

私の写真については一世紀前のパリを記録し続けたフランス人写真家ウジェーヌ・アジェの事が話に上がることがある。私自身も一度アジェが赴いたパリを追体験できる機会を望んでいたので、今回時間を取りパリに向かう事にした。
当然ではあるが、パリと東京では街の趣が全く違う為、どのようにこの街に対するアプローチをすれば良いのだろうと思いながら街を歩いていた。初日にアジェが住んでいたアパートを見た後、近くにあるリュクサンブール公園に寄った。この公園もアジェが数多く撮影した公園で、同じ被写体を何ヶ所か見つけることができた。パリの街中には至る所に彫刻物が存在しているのだが、この公園も例外なく数多くの石像が存在していた。いわゆるパリでは日常的光景ではあるが、アジェの撮った写真を現場で見ていると異なる風景に見えてくる。例えば石像と一定の距離を保ちつつ撮影された写真はとてもシュールレアリスティックに見えてくる。石像を近距離から撮影した記録性の高いものから、このように石像と距離を保った写真とを往来しながら見ているのも興味深かった。(写真1)(写真2)

 

▲写真1 ウジェーヌ・アジェ  "Luxembourg" (1923-25)

 

▲写真2 ウジェーヌ・アジェ "Luxembourg"


アジェは約30年に渡ってパリの街を撮り続けた人物である。私はその後、コンティ河岸にある造幣局で撮影された場所(写真3)に赴き、同じ構図でカメラを構えた。(写真4)

 

▲写真3 ウジェーヌ・アジェ "Hotel de la Monnaie, quai de Conti"  (1905-1906)

 

▲写真4 相模智之


(写真3,4)を比較すると、私は立ちながら目線に近い位置で撮影しているのだが、アジェの場合は若干私よりも低い位置から撮られている。高さはどうやら大型カメラを入れる箱にでも座って撮っているのではないかと思うような視線である。結果、私の写真より、より階段との距離が縮んでいる。この視線の位置から撮られた写真も単なる記録写真としてよりも、何か違う要素も入り混じったアジェの一個性の現れている写真になっているのではないかと思った。この視線の高さの違いや、大型カメラによるカメラのアオリ機能などはアジェをパイオニアにする為の大きな役割を果たしていて、アジェの写真で画面上部左右に写る黒い影(大型カメラのアオリの影響で写ってしまう本来なら失敗写真とされるもの)(写真5)は有名であるが、このアオリの影をアジェは何を想い撮影していたのか以前から興味深かったので、そのアオリの影響と橋がある写真に注目し、その橋がある場所に向かった。

 

▲写真5 ウジェーヌ・アジェ Rue de la Montagne-Sainte-GenevièveAvril (1926)


一世紀以上も昔に撮られた風景が今も変わらず原型をとどめてる姿は木造建築物で暮らす日本とは全く異なるが、現在でもこのようにアジェの撮影したポイントにアクセスできるのもまた不思議な感じがするものだった。

▲写真6 ウジェーヌ・アジェ Rue de Brentonvilliers


(写真6)はアジェが撮影した場所で、これはセーヌ川に浮かぶサンルイ島であるが、今もこの通りには橋が架かっていて、私もアジェ同様に同じポイントから撮影を試みた。ここでは何枚かの写真を掲載してみる。(写真7)は私が同じポイントで撮影した写真。(写真8)は私が日本で撮るような構図の写真。(写真9)は通り全体を見渡せるように撮影したものである。

 

▲写真7 同じポイントで撮影した写真

 

▲写真8 日本で撮るような構図の写真

 

▲写真9 通り全体を見渡せるように撮影したもの

 

まず(写真6と7)は造幣局の写真と同様にここでも視線の高さの違いが伺えた。(写真7と8)の撮影を通じて、橋に対するアジェの意識を感じられた。加えて橋を写真に定着させる上での構図がカメラのアオリ機能によって発生する具合とそっくりであった。また、(写真9)ではアジェが撮影した地点の背後のスペースを撮った写真である。この写真を通じて決して構図的には、この撮影地点よりも下がって撮影することが可能であったにも関わらず、この地点、さらにアオリ機能を使用しながらも橋の一部をあたかもアオリ機能で出来る影のように見せている時点で画面上部左右に影を入れる思いがあったのは一目瞭然であった。画面に入ったこの影の効果は、影の有無によって見方に変化が生じるはずで、影をあえて入れて撮影してる点でアジェはストレートな写真でありながら異なる要素をも取り込むことに意識的であったのではと感じた。
このパリでのアジェ体験を経て、通常の意識では見えないパリを目撃し、アジェの視点から学ぶことが多く、実りあるパリ滞在になったことは間違いなかったように思う経験であった。
今後も引き続きリサーチをして、いずれは発表できたら良いと思っています。

 

 

相模智之

 

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相模智之さんから、本原稿を頂いた後に私は横浜美術館のコレクション展でたまたまアジェの写真を覧ました。久しぶりに20点程まとめて覧ることができ、改めてアジェの多くの仕事を思い起こしました。帰宅後に、MoMA(ニューヨーク近代美術館)のサイトでEugène Atgetのページを検索し作品を調べると、そこには2861作品が掲載されておりアジェの仕事が100年以上経った今もネット上でまとめて見られることに驚かされました。被写体は、街並み、建物、内装、人物、植物など多岐にわたりますが、ページを進めていくとモネ展を覧た後だったので睡蓮や干し草の山の写真が何とも新鮮に見えました。

 

横浜美術館のコレクション展の会期は12月16日まで。アジェの写真をご覧になりたい方は訪れてみてはいかがでしょうか。

写真展示室の展示タイトルは「モネと同時代のフランス写真―都市の風景など」。その他、同時代の写真作家の作品もご覧いただけます。詳しくは下記、横浜美術館のサイトをご覧下さい。

https://yokohama.art.museum/exhibition/index/20180714-513.html

 

 

アジェの作品一覧はMoMA(ニューヨーク近代美術館)のサイトで多くご覧いただけます。

https://www.moma.org/artists/229#works

 

深川伶華

 


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  • 2018.10.19 Friday
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