「追憶」について

 

現在、工房親で開催中の上野さえ加個展「追憶」もいよいよ残り2日となりました。

 

 

 

 

今回の展示では、初めて写真を使った制作をしました。

一眼レフカメラを持ちはじめたのはつい最近のことで、言ってしまえば初心者です。かっこいい撮り方や特殊な撮り方はわからず、私は見たもののありのままを写すことしかできません。

 

それが今回、記憶を辿る上での「現実の記録」に実はもってこいなのではないかと考えました。

 

 

 

 

 

私が残したいと思った瞬間にシャッターをきり記録する。

しばらくしてその写真に対する記憶を辿った時にシャッターをきった瞬間とは違う色をそのものに対して感じます。

それを記憶の薄れや上書きの表れとしてパテとアクリル絵の具を重ねて色をつけました。

 

 

 

 

 

そういった制作の中で、自分の記憶に対する曖昧さや思考の身勝手さ、そして変化を感じました。

打ち消そうとする色や理想に近づけようとする色、皮肉さを持つ色など様々な意味を持つ色が広がった今回の制作では現実と意識の中でのやり取りが目まぐるしく行われました。

 

今回の作品たちに関して、それぞれの記憶というのはポジティブイメージとネガティヴイメージが約半々ぐらいの割合で展示されています。

 

タイトルやコンセプトから、なんだか辛気臭い展示になりそうだな…と予想していたのですが、いざ作品が完成してみるとそれぞれがそれぞれの色を持ってカラフルな展示になり、設営を終えて直感的に感じたことは「おもちゃ箱みたいだな」でした。

 

「おもちゃ箱」というのは自分にとって大切なものを大雑把に放り込んだ箱という認識です。

そう考えると、ポジティブ・ネガティヴ、どちらの記憶も私にとっては既に大切な記憶に変わっていて、でもそれらもきっとこの先また別の色を持ってずっと私の中の箱にしまわれていくようなものたちなのだろうと思いました。

 

 

 

 

 

 

私はこの春から保育や福祉の資格を取るための専門学校に通っています。

工房親での経験や自分の体験を通して、「人」というものについて学び、より人の心に寄り添った形を求めてこの道を選びました。

決して美術の分野から離れるというわけではなく、知識と経験を積んでゆくゆくはギャラリストという形でこの業界に戻ってきたいと思っています。作品制作は少しずつでも続けていきます。

 

そんな私の第一歩目を見に来てくださった皆さま、本当にありがとうございました。

未熟者ながら精一杯、そして、やりたい放題させていただいた展示です。

次にお目にかかる時はさらにパワーアップした姿をお見せできるよう前に進んでいきます!

 

 

 

 

最後に、

 

工房親での3年間は私にとって本当にかけがえのない時間でした。

みなさんとの時間、学び得たこと、自信を持てたこと、悔いたこと、そのどれもが今の自分に繋がっています。

 

お世話になった全ての方々と、最後の最後までこのような機会をいただき私の人生に優しく寄り添ってくださった馬場さんに感謝を込めて。

 

 

 

上野さえ加


上野さえ加個展「追憶」 開催!

4月7日より、上野さえ加個展「追憶」がはじまりました。

 

 

 

 

これは私が工房親を退職するにあたり、馬場さんが設けてくださった卒展です。

 

 

 

3年間務めた工房親で学んだこと、得たことは多く、そのどれもが今の自分に繋がっていると感じます。

 

デザイン学校を卒業し、自己流でしかアートに触れてこなかった私には毎日が新鮮で、馬場さんをはじめ、作家さんやご来場下さるお客様とのやりとりはとても貴重で充実した時間でした。

 

そういった日々の記録を残したい、という想いが今回の作品のきっかけとなりました。

 

23年間生きている中で嬉しかったこと、悲しかったこと、楽しかったこと、苦しかったこと、沢山の経験をしてきました。

 

日々、忘れずにいたいこと、忘れてしまいたいことの連続の中に私はいます。

そして、そのどちらにおいても自らの意思とは関係なく「忘れてしまってはならないもの」が存在します。

しかし、それらは振り返る度に色を変えたり、薄れてしまうような不安定な存在。

 

追憶する中での再会や新たな出会いを制作や発表を通して実感し、今の私の在り方を見ていただきたいと思いました。

 

 

 

 

 

 

 

 

4月8日にはオープニングパーティーを限定招待という形で行わせていただき、これまでお世話になった工房親の関係者の方や作家さん、友人や恩師などが足を運んで下さいました。

 

 

 

 

 

 

来ていただいた方たちからは作品だけではなく私自身についてもコメントをいただき、その中でより自分が明確になっていき、大切な人たちに囲まれて、これまでの自分、今の自分、そしてこれからの自分の方向を示せたのは本当に良い体験でした。

 

展示は22日まで開催しております。

是非ご高覧いただけますと幸いです。

 

上野さえ加

 

 


3月に観た展覧会について

3月に観た展覧会からいくつか、ビックアップする。

 

渡邊耕一展 "Moving Plants"

 

資生堂ギャラリー

 

ふとした事から植物の「イタドリ」にひかれ彼の記憶や記録の中からイタドリの足跡をたどる。

それは、博物学的な観点や歴史的な事も考察したら世界の各地でイタドリが広まっていった10年以上をかけて撮影したドキュメンタリーでもある。

 

ドキュメンタリー 解説の一部

 

くしくも、工房親では2月の恵比寿映像祭地域連携プログラムで相模智之展を行った。

彼も又、12年をかけて東京とその周辺の昭和の公団や×××荘というようなアパートを撮った。

 

相模智之展「Behind Closed Doors」

 

年齢も対象も撮影場所も違うが、お互い写真の背後にある記憶や歴史など目に見えないものを追っていた。渡邊の写真は美しく、空間をたどって観ていくと実に心地良かった。

 


糸井潤写真展 ”Light Weaver 〜光を編む人”

 

ギャラリー砂翁

 

工房親では、糸井潤がフィンランドへ行く前、そしてフィンランド帰国後の2011年7月と個展をしている。又、2015年7月にはグループ展でも紹介している。

 

今回の日本橋「ギャラリー砂翁」での個展では以前、”工房親”での個展で発表したワックスもの、フィンランドで撮影されたものから木こりを目指し中之条に移住されてからのものといくつか分別される。

 

更に画廊の道路に面した窓いっぱいに満開の桜の写真がスクリーンか何かのように展示されている。

 

展覧会のタイトルは、”Light Weaver 〜光を編む人” となっている。桜の大きな写真と他の作品のつながりは私にはみえてこなかったので、今度お会いした時に質問してみたいとおもう。

 

 

大塚勉写真展 「空が割れた日」

 

ギャラリー ヨクト

 

2017年11月、原発事故後の福島県、浪江町、富岡町の帰還困難地域周辺という説明がある。

 

大塚は故郷の浦安が2011年の大地震で液状化された事をきっかけに元来、水や土に興味を持って撮影していた彼は原発にも深く関心を寄せていった。その写真は特別大きいサイズや特殊なものはない。

 

淡々としたそれらは、あまりにも美しい物語のような風景にもみえてくる写真に私はどうしようもない不思議な感情やそら恐ろしい感じがした。

 


安西剛展 「カゲノカゲノカゲ」

 

3月8日、一日中かなり強い雨の寒い平日。私は安西剛展を観にさいたま市、加茂宮のプラザノースギャラリーへ向かった。大宮までは、恵比寿駅より1時間弱。一直線で着き、意外と近い。その後「ニューシャトル」という乗物に乗るのは初体験。「鉄道博物館駅」を過ぎると加茂宮駅だ。そこから徒歩5分というが、辺りには何もなく心細い。ようやく近代的な新しい建物に入り会場入り口を見つけた。

 

暗い会場を入り目が慣れず、ぼんやり映像作品らしきものに近づいたら「馬場さん」と声を掛けられた。

それは、今回展示作家の安西さんだった。暗い中で、安西さんらしいと分かり説明をきき始めた。

 

以下8つのタイプ別作品が展示されている。

 

1.distance
2.TBD no.8-35
3.126 unique molds from one object
4.Document
5.th-read
6.Coccyx’s Identity Crisis
7.Search by Portrait no.1-7
8.Oblivion


6の “Coccyx’s Identity Crisis”は、昨年(2017年)11月に”工房親”で発表された作品で再び出会えて懐かしい。

Coccyx’s Identity Crisis

 

私は2の”TBD no.8-35”と5の”th-read”に特に関心を持った。

 

TBD no.8-35

 

安西剛 th-read 2015 Biyong Point

 

 

1時間以上に渡り、1つ1つ丁寧に説明くださった安西さん。まさか、作家さんを1時間にもわたって独占しようなんて思っていなかったので寒い雨の中でも至福の一時を持てて良かった。実は、安西さんから展覧会お誘いのメールを頂いていたのだが、安西さんにお手数をかける気は無かったので何もお知らせしないで訪ねた。だから、安西さんとお会いする事もましてそんなに良くご説明頂くなんて期待していなかった。

 

しかし、現代アートにおいては、勝手にアレコレ想像するのも良いし、楽しいがやはり作家に説明してもらうとより充実して楽しめる。3月に観たいくつかの展示をご紹介したが、やはり最も印象に残ったのは「安西剛のカゲノカゲノカゲ」。

 

 

現代美術をより深く理解する為には、作家や良き通訳者がいてくれると「イイナー」と実感した。

 

雨が降る薄暗く寒い日がとても有意義な良い日となった。

 

 

馬場隆子

 


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